その日は朝からどんよりとした雲行きだった。

こんな日は決まって頭痛に悩まされる。
私、瀬尾由香は布団の中で盛大に溜め息をつく。

「あ~、仕事行きたくない~…」

枕に顔を埋めてボヤいてみるも、頭痛が起こりそうなので会社を休みます。何て理由が通用するわけもないので、渋々身体を起こして朝食の用意を始める。

朝食と言っても、トーストとインスタントのカフェオレ、あとは冷蔵庫のヨーグルトを出すだけ。
あっという間に用意が出来、朝の情報番組を眺めながらトーストをかじる。

『…今日は全国的に曇り、夜から所により雨が降るでしょう。折り畳み傘を持って行くと安心ですね!』

朝から元気なお天気お姉さんを恨めしく思いながら朝食を終え、着替えをする。

気分を少しでも明るくするためにお気に入りのクリーム色のブラウスを選び、紺色のフレアスカートを合わせる。
ロングの緩くウェーブのかかった髪をシュシュでまとめ、メイクをする。
社会人になって9年、メイクにも慣れた。
口紅は顔色をよく見せるためにピンク系のものをひき完成。

「よしっ!」

鏡の中の自分とにらめっこして気合いを入れる。

バッグに痛み止の入ったピルケースがあるのを確認して玄関に向かう。
傘を持って行こうか悩むが、定時で終われれば雨には遭わずに帰れそうだ。

「折り畳み傘なんて持ってないよ…」

先程のお天気お姉さんにツッコミをいれつつ私はアパートを出た。