「な…んで…だ。あ…りえ…ない。」
山口君は大きな音を立ててその場に倒れこむ。恐らくもう息はしていないだろう。
山口君の胸元には、心臓の形をした穴が開いている。大量の血がながれる。それはとても戦慄な光景だった。
周りの皆は一瞬静まった。しかし、その直後、
「キャアアアアアア!!!!!!!」
と叫びながら、神田さんが扉の鍵を開け、廊下に飛び出した。
「うそ…わたしは…嘘
…なんて言って…な…い…のに。」
そこには心臓のなくなった、神田さんのすがたがあった。どうやら神田さんは最初の放送を信じていたようだ。床が赤黒い液体で染まっていく。僕はそんな2人の姿をみて、何もできない自分に腹が立った。すると、僕の唯一無二の親友である乱歩が話しかけてきた。
「どうした、勇?」
「あ、ああちょっとな…」
「悔しいのか?2人に対して何もできない自分が。」
「ああ」
「お前のせいじゃないよ。これはきっと夢さ。こんなことができるやつなんているわけがない。だから、気にするな。」
「そうだと…いいんだけど。」 
「おまえには彼女がいるからなー。美人な、か・の・じょ!」
「やめろ、こんな状況で…」
「そうだなーでも夢だから。きっと。」
皆状況を理解できていないようだ。それぞれが口々に言葉を発し、いつだれが嘘をいってもわからないような状態になった。
これは不味いと思ったその時、普段はあまり大声を出さない、神山さんが声をあららげて言った。
「とりあえずみんな黙って!!!喋れば喋るほど、死ぬ確率が高くなるの!!!嘘を言えば皆死ぬの!!!」
皆、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして驚いている。
「そ、そんなことはありえないだろ!」
乱歩が間髪いれず、ツッこんだ。
「で、でも、実際こうして二人が死んでる…んだし」
「そ…それはそうだけど…」 
と、ふたりが話している時に、のぶとい、機械音声のような耳障りなこえが、天井に取り付けられているスピーカーからながれる。
『その少女の言うとおりだ。彼(山口)は嘘をついたが故に罰を受けた。』