うちは止まらない涙も拭かず、とぼとぼと家まで歩いて帰った。


「ただいまー…」

誰もいないのに癖でいっちゃった。

悲しいよ…。寂しいよ…。


「ふえっ……」

涙が…とまんないよ……。

おにいちゃんーーーー。


いつもうちのそばにいてくれた。


怪我した時もいやな顔一つせずに手当てしてくれた。


お兄ちゃんの仕事が休みの日は一緒にいてくれた。


彼女よりもうちを大事にするお兄ちゃんの記憶がなくなった。


リハビリ…。

あの看護師の言葉が頭にふと浮かぶ。

「記憶を……取り戻せるのはうちだけってこと……?」

うちなら、出来る。

今までの恩返しだよ。


いつかまた笑える日が来るように。


2人でまた遊べるように。


お兄ちゃんのーーー。

「記憶、取り戻すよ。」