鬼田くんに背中を押されて、渋々丸椅子に座った黒髪。
あたしから、チラチラ目を逸らして小声でボソッと言った。
「音瀬銀……」
「音瀬くん」
「っ………黙れ。早く手当てするんならしろ」
「銀たん照れてるぅ~♪ひゅーひゅー!」
「大地。お前あとで覚えてろ」
音瀬くんと鬼田くんは衝突多い。
性格真逆なのが問題なんだろうけど。
あたしは、音瀬くんの整った顔の傷を消毒してひたすら手当て。
ん、完了。
「サンキュ………」
「いや、こっちこそ。悪かったのあたしだし」
「は、はぁ?勝手に責任感じんな」
「ありがと……音瀬くん」
性悪でかなり印象悪かったけど、見方変わったかも……。
助けてくれたのが、この人達でよかった。
3人の傷だらけの右手は守ってくれた証し。
素直に「ありがとう」って言うべき、かな。