桜吹雪の向こう側に、俗世を離れたような姿の男の人が立っていた。

色素の薄い肌、茶色がかった髪、長いまつ毛、グレーの瞳…

あたしもその人もしばらく何も言わずに立っていた。
その人の放つオーラにあたしは圧倒されていた。

その人が口を開いた。

「お前、松本香花だろ…?」

あたしは、
「なぜ、あたしの名前を…」
こう話すのが精一杯だった。

「さぁ…、なぜでしょう?」

その人は少し笑いながらこう言った。