「唯ちゃ……」
小声で囁こうとする蒼。
まずいと思い、慌てて口を塞いだ。
……あたしの唇で。
ドキドキドキドキ……
鼓動はさらに速くなる。
この緊張が、唇を伝って蒼に届いてしまいそう。
だけど、この愚かな行為が蒼のスイッチを入れたのだ。
蒼の肉食スイッチを。
身体をぎゅっと抱きしめられる。
強く、そして優しく。
蒼の香りがふわっとして、頭が朦朧となる。
キスは激しさを増し、深く深く相手を求める。
「……ふっ」
声を必死に我慢して、蒼に抱きつくあたし。
あぁ、あたし、おかしくなりそうだよ。
「あれ?
何か聞こえなかった?」
女性の声が聞こえ、ドキッとするあたし。
そんなあたしから唇を離し、蒼は指であたしの唇をなぞった。
その満足げな顔が色っぽくて、かっこよくて。
あぁ、蒼には敵わないと改めて思う。
普段はおちゃらけているのに、瞬時に碧に切り替わる。
あたしを狂わせ理性を失わせる、甘い野獣に。