「唯ちゃん!帰ろっ!!」
賢一の隣にいるあたしに、蒼が声をかける。
慌てて立ち上がるあたし。
だけど、蒼の顔を見ることが出来ない。
胸がもやもやして、何だか気分がすっきりしなくて。
あたしの気持ちは落ち着かない。
「もうッ!賢一!!
また俺の唯ちゃんを横取りするの?」
やめて。
そんなこと言わないで。
「唯ちゃんは俺だけのものだからねっ!!」
あたしは、何を信じればいいの?
非力なあたしは祈ることしか出来ない。
蒼があたしから離れていかないように。
お願い、蒼、行かないで。
どんなこともするし、何でも我慢するから。
だから……
あたし以外の女の人を、好きにならないで。
スタジオの外に出ると、生暖かい空気が立ち込めていた。
遠くで雷鳴が聞こえる。
これから雷雨になりそうだ。
あたしの心も雨模様。