荒々しくドラムを叩く玄。
F独特の変則的なリズムを軽々と叩く。
スラップが得意だという酙。
そのベースラインはまるでギターのよう。
あり得ない早弾きをする艶。
その誰にもマネできない歪んだ音色は天才的だ。
そして……
さっきまでヘラヘラ笑っていたザキ。
そんな奴はどこにもいなかった。
複雑なリズムギターを難なくこなし、不敵な顔でその魅惑の唄を披露する。
力強く、時には色気もあって。
人々を挑発するように睨み、そして狂わす。
心に響く低音部。
ミックスボイスを上手に使った高音部。
その歌声は人々を魅了して離さない。
すげぇ。
やっぱり次元が違う、こいつら!
「入場制限かかってるんだって!」
ドラムのユータが俺に言う。
やっぱりそうか。
はるか彼方、地平線のところまで人がいるようだ。
この人々の中で、どれほどの人がキングに興味があるのか分からねぇ。
だけど、せっかくのチャンスだ。
熱意ではFに負けねぇ。
それに、碧がライバルと認めてくれた。
それを誇りに思って俺は頑張る。
「円陣するか」
俺の言葉に戸惑うメンバー。
そんなメンバーの肩に、無理矢理手をかける。
「行くぞ、キング!!」
俺たちの気合いは十分だ。