ー唯sideー
あたしたちはそのライブハウスの前にいた。
久しぶりに会う、ハルと芽衣夫婦とともに。
ハルと芽衣は産まれたての子供を親に預けて来てくれたらしい。
蒼の違った晴れ舞台を見るために。
「今日の目玉はキングだよなー」
周りはキングというグループのファン一色で。
ふとももフェチの話なんて出てこない。
出るといったら……
「ふとももフェチ?
そんなの知らねぇなー」
「てか、このライブの審査、結構レベル高いんでしょ?
……てことは、ふとももフェチも審査通ったの?」
そうなのだ。
今日のライブは審査がいる。……らしい。
蒼が言うには、「まぐれで通った」。
だけど絶対に違うと思う。
いくらふざけているとはいえ、Fの四人だ。
ライブハウスの審査なんて簡単に通ってしまうだろう。
完全にアウェイだった。
むしろ、馬鹿にされていた。
本当はFなのにと叫びたい。
Fだと分かると、一体この中の何人が目の色を変えるだろう。