ー優弥sideー
あのガキは、いつまでたってもガキだ。
「遠藤様、お待ちしておりました」
部屋に通され、向かいに蒼の先輩が座る。
見たところ、俺より少しだけ歳上。
優しそうな先輩だ。
「すみません……
あいつ、会社でもサボっているのですか」
俺の言葉に、先輩は意外な反応をする。
「サボる?
戸崎が?
……戸崎、すごく真面目に働いています。
自慢の後輩です」
彼はそう言った。
「納得いくまでプランを立て直して、お客様にも親切で。
戸崎の評価は高いです。
ただ……」
「ただ……」
俺は息を呑む。
次はどんな言葉が飛び出すのだろうか。
「ただ……彼は馬鹿です。
オンとオフがはっきりしているというか……
スイッチが入った彼はすごい。
さっきまで普通だったのですが、遠藤さんが来られた瞬間、戸崎の馬鹿スイッチが切り替わってしまったようです。
あの戸崎が時にすごい力を発揮するので、私は驚かされます」
先輩はそう笑っていた。
だから俺も笑っていた。
「それが蒼です。
やる時はやる男なんです」
俺はそんな蒼とFが出来て、本当に嬉しい。
そして、そんな蒼のことを誇りに思っている。