「戸崎さん、可哀想だったね」




ふと、会議室の外から声がした。

俺は思わず身体を強張らせる。




「調子乗っちゃったよ、俺」



「だよな。

だって戸崎さん、四年以上も黙り続けてたんだろ?

今さら騒がれても迷惑だよ」





隠してきたわけではない。

でも、打ち明けなかった。

知られたら騒ぎになるから。

それに、平等に見られなくなるから。

そういう目で見られるから。




だけど……



前田課長は俺を本気で助けてくれる。

北野さんも心配してくれるし、相談にも乗ってくれる。

後輩たちは慕ってくれるし、




中山に至っては……




中山は……







「でも俺、本当に感動しました……」




中山の声が聞こえる。




「戸崎さんばっかり見てしまって。

今日もずっとドキドキして。

もう……

戸崎さんにどんな顔で会えばいいのだか……」





それは俺も同じ。

俺も、ファンと言われた人は意識してしまう。

だから……

多少、特別な目で見られるのは仕方が無いかも。

それも含め、俺の個性だから。





仕事内容だけが全てじゃない。

人間関係も、プライベートも。

だってFもそうだった。

俺たちは、日頃の楽しみを糧に生きてきた。