Fの曲は難しい。
そして、例外なくこの曲も難しい。
それでも頑張った。
必死に頑張った。
突っ立って弾いて歌うのがやっと。
碧みたいなパフォーマンスなんて、出来るはずもない。
息継ぎが苦しい。
手が痛い。
こんな化け物のような曲を何曲も続けるFは、本当にすごい。
間奏に入り、ドラムソロが始まる。
それに合わせ、オタ芸をする戸崎さん。
会場が笑いに包まれる。
そんな戸崎さんと一緒に、俺も練習したオタ芸を披露していた。
腕を突き上げ、回し、飛び跳ねる。
かっこ悪い、こんなことしたくはなかった。
だけど、戸崎さんの言うとおり、会場は笑いに包まれた。
こんなかっこ悪いことを真剣にやる戸崎さん。
そんな戸崎さんは、本当にかっこいい。
ペンライトを持った先輩たちが現れる。
それに混ざり、前田課長も。
みんなチェックのシャツを着て、ジーンズにインして、バンダナを巻いて。
そしてカラフルなペンライトで真剣に空気を切り裂く。