ー中山sideー
俺は戸崎さんに見入っていた。
碧のステージとは全然違うけど、楽しそうにギターを弾く戸崎さんは、間違いなく碧だった。
戸崎さんの奏でる音は時に優しく、そして時に太く力強い。
まるでギターが喜んで歌っているようだ。
どうしたらあんな音が出せるのか。
不思議なその魅力にやられてしまう。
そして、憧れの人の演奏をこんなに近くで聴けるなんて。
嬉しくて嬉しくて。
泣きそうになる。
だけど……
「中山」
戸崎さんが笑いながら俺に言う。
「真面目にやりなよ!」
それはさっきまで俺が戸崎さんに言っていた言葉。
俺は真っ赤になってギターを握りしめた。