「戸崎、眠いか」
北野さんの声ではっと我に返った。
ヤバい、完全に我を失っていた。
ここのところ、睡眠時間がほとんどないから……
というのも、ライブが決まってから、仕事後に賢一のレストランに集まって練習をしているのだ。
優弥は非公式なライブだと言っていた。
だけど、適当に済ますのは、俺たちのプロのプライドが許さなかった。
今や有名プロデューサーの優弥。
優弥のスタジオには有名アーティストが通っていて。
だから、昔みたいに我が物顔で占拠するわけにもいかない。
そこで、賢一のレストランを使っていたのだ。
賢一の練習方法。
それはすごい。
ドラム生演奏サービスなんて言いながら、業務内にドラムを叩いていた。
……オーナーの特権だ。
そして、俺みたいなサラリーマンには許されない。