あれから数年の月日が過ぎた。
あっという間に。
「戸崎。今日も残業か?」
暗くなったオフィスで、机に向かう俺に、北野さんが聞く。
俺の直属の先輩だ。
「はい……
どうしても柱の位置が定まらなくて。
お客様は柱のない広いリビングを希望されているので……」
俺は図面を見て首を傾げる。
「真面目だな、お前は」
北野さんはそう言って、俺に缶コーヒーを差し出してくれる。
「明日なのにな、結婚式」
「……えぇ。
妻になる彼女のために、一生懸命働かないといけませんから」
俺はそう言って、缶コーヒーに口を付けた。