「君は素直だね」




ふっと緩んだ声が聞こえ、思わず顔を上げた俺。

すると、唯ちゃんのお父さんが少し困った顔で俺を見ていた。




「初めて会った時から分かったよ。

ライブでのあれは、訳があってやっているんだろ?」



「え?」




俺はぽかーんと唯ちゃんのお父さんを見つめていた。




「遠藤さんにも言われた。

君は真面目でまっすぐな男だと」




優弥が?

……あの優弥がそんなことを?




「私の大切な娘だ。

だけど、君といたほうが唯も幸せなのだろうな」



「……」




その辛そうな顔を見ると、胸の奥がぎゅっと絞られる。

彼が大切に大切に育てた唯ちゃん。

そんな唯ちゃんを奪いに来た俺は、彼にとって最悪な悪者。



だけど……





「幸せにします!必ず!!」




俺は深く深く頭を下げていた。







お父さんが大切に育てた唯ちゃん。

お父さんが近くにいられない分、俺が大切に守るよ。

……いや、俺が守られているのかな?

あの天使のような笑顔に。




魚に水があるように。

人間に空気があるように。

俺には唯ちゃん。

俺はもう、唯ちゃんがいないと上手く生きられない。