「じゃあ、はっきり言ってよ」
新しい声がした。
あたしたちは一斉に、入り口を見た。
そこには、顔を真っ赤にした松原多恵が立っていて、口元をきゅっと結んで慎吾を見ていた。
「酙君……ううん、慎吾君。
あなたはいつも上辺だけで。
あたしと真正面からぶつかってくれないよね」
慎吾は驚いて顔を上げた。
「あたし、不安だった。
あなたに嫌われていると思っていた。
だって……
あたしといる時の慎吾君は、Fのみんなといる時の慎吾君と違う」
「そうなのかよ」
賢一がニヤニヤして慎吾を小突いた。
「あたし……慎吾君のこと、好きだった。
でも……」
「好きだよ!」
慎吾の声が、テントの中に響き渡った。
そして、その瞳はしっかりと松原多恵を見つめている。
「俺は、松原さんが好き。
だけど、怖かった。
……本当の俺を知られるのが」
慎吾の声が震えていた。
「蒼に協力してもらって、友達も出来たのに。
でも、やっぱり怖かった。
幻滅されるのがね。
本当の俺は臆病者で、怖がりで、ずる賢い」
「そんな慎吾君が好きなのに……」
松原多恵はその場に座り込んだ。
そんな松原多恵にゆっくりと歩み寄り、身体を抱きしめる慎吾。
ヒューッと賢一が口笛を吹き、それを優弥さんが叩く。
蒼はただにこにこしてそれを見ていた。
良かったよ。
思いが通じて。
本当に良かったね!