運転席からは優弥さんが顔を出し、
「紅さん。お久しぶりっす」
大きなサングラスを少し下げる。
「優弥ちゃん。
蒼をよろしくね」
紅さんははじけるような笑顔で言った。
そんな紅さんを、鼻の下を伸ばして見る優弥さん。
「紅さん。
良かったら、今度俺と……」
伸ばされたその手を、笑顔ではたく紅さん。
蒼そっくりの太陽みたいな笑顔だ。
だけど、
「ごめんね、優弥ちゃん。
アナタ、あたしのタイプじゃないの」
その言葉はなかなか酷い。
「だって今の優弥ちゃん、ホストみたいじゃん」
ぷっ……
蒼が笑い、すかさず紅さんの蹴りが入る。
そんなやり取りを、優弥さんと慎吾は楽しそうに見ていた。
蒼の家族は温かくて楽しくて。
あたしを温かく迎え入れてくれて。
あんな人たちと本物の家族になれればいいな、と思った。
そして、あたしも紅さんみたいな素敵な女性になりたい。
素敵メイクを覚えたあたし。
蒼はちらちらと不安げにあたしの顔を見た。
不安なのはあたしだけじゃない。
あたしの劣等感だけじゃない。
そう思うと何だか嬉しかった。
あたしは素敵女子になりたいけど、蒼のもとを離れない。
絶対に離れないよ。