エレベーターに乗り、旅館の外に出る。
外は思いのほか寒くて。
「湯冷めしちゃうね」
そう言って身を寄せる蒼。
あたしは、そんな蒼の手をぎゅっと握った。
大多数の観光客は、自分のことに精一杯で蒼になんて気づかなかった。
それでも一部の人は、蒼に気付いて指を指したり内緒話をする。
蒼は全く気にするそぶりもない。
あたしに身を寄せ、髪を撫で、笑った。
蒼といる時間はすごく楽しくて、あっという間だった。
いろんな話をして、お腹を抱えて笑った。
気付いたら辺りはすっかり暗くなっていて。
「ご飯の時間だね」
蒼は言う。
「迷ったんだけど、今日は部屋でご飯だよ」
言われるままに蒼に手を引かれ、客室に戻った。