滅多に行かない都心。
そこに、あたしたちはいた。
辺りはすっかり寒くなっていて、コートに身を包んだあたし。
蒼はいつものように帽子をかぶり、黒縁メガネをかけ、口元にマフラーを巻いていた。
いくら都心とはいえ、蒼に気付く人はほとんどいない。
オーラがないし、にこにこしているから。
でも、やっぱり気付く人はいたりして。
「碧さん!?ライブ行きます」
とか、
「碧!?超かっこいい」
とか言われたりしていた。
その度に、ありがとうと笑顔で言う蒼。
言ったあとにはあたしの手を引いて足早に逃げる。
「都心怖い」
蒼は肩で息をしながらそう言った。
大学の周りでは、もはや好き放題の蒼。
こうやって呼び止められもしない。
だけど、都心に行くと感じた。
やっぱり蒼は大スターなんだと。