幕が閉まり、気が抜けたように表情を緩めるメンバー。
それでも彼らは、Fを止めない。
水分補給に歩いてくる彼らは、まだまだプロの顔をしている。
引き締まった顔の碧を見て、あたしの胸がとくんと言う。
汗で濡れ、息が上がり、足元がふらつく。
だけどまっすぐあたしを見つめて……
「お疲れ様……」
タオルを差し出すと、少し笑ってそれを受け取ってくれて。
浴びるように水を飲み、再び舞台へ向かっていく。
……そう。
アンコールに応えるために。
ヘトヘトな身体に鞭打って、渾身の演奏をする碧。
今にも倒れてしまいそう。
だけど、それを知っているのはあたしだけ。
だって、彼は舞台の上ではクールだから。
疲れなんて感じさせないから。
余裕な表情をして、威嚇するように客席を睨み回して、甘い歌を披露するから。
あなたは大スターで、人気者で、カリスマ。
だけど、努力家で、普通の男の人で、上がり症。
そんなあなたから目が離せない。
あたしはもう、あなたしか見えない。