「唯ちゃん、いいこと教えてあげる」




蒼はあたしのおでこに優しくキスをする。

身体がほんわりと熱を持つ。




「俺さ、実はすごく上がり症なんだ。

本番直前まで、いつも焦ってる。

でもね、ステージに立つと違うんだよ。

緊張も吹っ切れて、伸び伸び出来る」





そうなんだ。

蒼だって緊張するんだね。

何だかホッとしたよ。





「ま、Fのライブでは伸び伸びってわけにはいかないけど」




そう言って、ふふっと笑う。




「だからね、唯ちゃんも楽しむといいよ。

十分練習したんだから。

あとは、ステージを楽しむだけ」





蒼ってすごいな。

楽しむなんて発想、あたしにはなかった。

蒼のおかげで何だか眠れそう。

ありがとう、蒼。

明日、楽しみだね。

初めてだからね、蒼と一緒にステージに立つの。

一緒に楽しもうね。





あたしは、温かい蒼の胸の中で眠りについた。