だけど、蒼は笑顔で首を横に振る。

その笑顔にほっとした。




「ううん、俺、気にしてない。

唯ちゃんが店長にほっぺをつねられても。

唯ちゃんの耳元で店長が囁いても。

店長と手をつないでも」




蒼は背を向けて、冷蔵庫にケーキを入れる。



そうだよね、それくらい。

分かってるけど、少しショックだな。

蒼、実は経験豊富で冷静だから……






「……ううん、本当はすごく気になった。

店長を蹴飛ばして、唯ちゃんを連れて帰りたくなった。

俺、嫉妬に狂ってるよ?」



「蒼……」



「もうやだよ。唯ちゃん狙われるの」




そう言って蒼は冷蔵庫を閉め、あたしに向き直る。

その瞳は、捨て犬みたいに悲しそう。