「楽しかったねぇ!」
帰り道、いつものように蒼が言う。
辺りはすっかり暗くなっていて、忘れていた空腹が襲ってくる。
音を立てそうなお腹を押さえると、
「ご飯でも食べて帰る?」
蒼はそう言ってくれた。
飄々としていて、のんきでマイペースな蒼。
いつもは優弥さんに怒られている。
だけど、今日の蒼は何だか優弥さんみたいだったな。
そんな蒼もたまにはいい。
「あー、唯ちゃんって本当に努力家だよね」
そう言って宙を仰ぐ蒼。
蒼に言われたくないよ。
蒼こそ、血の滲むような努力をして頂点まで登りつめたんだから。
「俺さ、学祭だし適当でいいと思ってた。
間違えたりした、笑って誤魔化せばって。
でもさ……」
そう言って、蒼はあたしを見た。
胸がどきんという。
そのまっすぐな瞳に吸い込まれそう。
「唯ちゃん見て、俺もちゃんとしないとって思ったよ。
俺も負けないように頑張る」