「あー。薬指が弱いね」
そう言って、あたしの薬指をぎゅっと押さえる蒼。
指が触れただけでどきんとしてしまう。
あたし、いつまで経っても蒼になれない。
蒼に押されたままギターを鳴らすと、ようやく綺麗な和音が流れた。
少しだけホッとした。
だけど、まだまだ先は長い。
「蒼、あたしは自主練するから、Fの練習しなよ」
そう言うあたしに、
「唯ちゃん見てると放っておけないんだよね」
またまた甘いことを言う。
こうやって理由を作ってはあたしの近くにいてくれる蒼。
すごく嬉しいけど……
「Fの碧が失態を犯すところなんて見たくないな」
あたしは呟いていた。