「唯ちゃん、お待たせ」




目の前にいる蒼は、いつもの蒼だった。

そう、碧でなく蒼だ。




ワックスで立てられた髪は今は微かに濡れてぺたんと寝ている。

素朴なTシャツにハーフパンツ。

足元はいつものスニーカー。

それでもセンスがきらりと光る。





「お前、どこ言ってたんだよ?」




そう言いながらも笑っている慎吾と賢一。

その奥で、優弥さんだけが不機嫌だった。

それでも、




「お疲れ」




蒼にそう言うだけで責めはしない。

そんなメンバーが少し意外だった。





「蒼、このあとメシ行くか?」




そう聞いた賢一に、




「今日はいいや」




答える蒼。




「そのほうがいいよ」




慎吾は意味深な視線をあたしに向けていた。