しばらくして、辺りはしーんと静まり返った。
どうやら、エキストラたちはスタジアムから出ていったようで。
ようやくあたしたちはトイレから解放される。
「行こうか、唯ちゃん」
蒼がそう言ってあたしを離す。
あたしの身体はもうふらふらで。
力なくその場に倒れこんでしまいそう。
それでも自力で身体を支えるあたし。
また蒼に触れたら、今度こそ何も出来なくなる。
そう、蒼の魅力は半端ない。
「唯ちゃん、このあと二人で出かけよう」
蒼は青いパーカーを脱ぎながらあたしを見て笑う。
その笑顔に胸がやられてしまう。
「お楽しみはそのあとだよ」
不安で不安で。
不安に狂いそうなあたしだけど、今は幸せ。
だって蒼は簡単にあたしを手離す気はないみたいだから。
あたしは蹴られても罵られても、地獄の底までついてくよ。
もう、あなたから離れられない。