そんな風に物思いにふけっていたあたしの横で、ぺちゃぺちゃと子猫は牛乳を飲み進める。


無邪気だな。


ふと、そんなことを思ってしまった。


あたしから失われたものをこの子猫は持っているような気がして、なんだかうらやましくなった。





照れ隠しのようにそっと子猫の頭を撫で、ぬくもりを感じていた。




そんな時。


ガサゴソッ



葉をかき分ける音がして、木の陰から人が出てきた。



このマンションは木に囲まれているので、そんなことは珍しくもない……のだが。


子猫が体を震わせたので、あたしもつられるようにそちらを見た。




それが、命とりだったのかもしれない。