新しいバイトを始め、また、自由な時間が取れなくなった、僕の憂鬱。

夜中のコンビニだと、無理。や、無茶。をすれば、あいとの時間を作れたけれど、朝から夜までの、配達の仕事では、どうしても時間を作ることが難しかった。

そのせいかは分からないけれど、苛々したり、小さなことでも、あいに当たってしまう。

『何で、急に怒るの?』

僕にとっての安定剤が、あいだから。なんて、言える訳もなく、それにも、また、わだかまりを感じてしまう。

『ウザイ。』

会いたい。と言えない気持ちを分かってほしくて、あいに向けている言葉じゃない。と、信じてほしくて。

『もういいよ。』

不安。と、ばかり仲良くなる悪循環をしたくないのに、繰り返してしまう、僕の悪い癖。

『ゴメン。』

傷付けたくなくて、意味もなく、謝ってほしくなくて、

『メールすんな。』

口下手な僕にできる、精一杯の気使い。

『嫌。』

好きすぎて、でも、会えなくて、それを、伝える術(すべ)を知らなくて、それを、我慢できない自分が、そこにいた。

それでも、仕事中には、笑顔でいないといけないことも、また辛くて。

疲れて、仕事が終わった後に、『喧嘩したから』を理由に、

『会おうか。』

なんて、夜中にメールを送っていた。

『今からは、無理だよ。』

一人の部屋の中で、消えないモヤモヤを、メールで、あいにぶつけてた。

『分かったよ。じゃーね。』

甘えてしまうから、傷付けてしまうから、あいのアドレスを拒否設定に登録していた。

嫌われるのが怖くて、会えないのが嫌で、好かれているのを分かってても、気持ちを試してしまう子供の自分。

数分しか経っていないのに、やはり、寂しくて、声を聞きたくて、携帯を開いてみた。

それと同時に、タイミングよく鳴り出す、着信の音。

「もしもし。」

「会おうよ。もう、家を出たから。」

冷たい声に、苛立ちを感じながらも、夜中に外を歩くあいが心配になり、待ってて。なんて言いながら、買ったばかりのバイクでも、乗り慣れた車でもなく、走って、長い階段を降りた。

やっと着いた、一番下で待つ女の子に、ゴメンね。の、一言と、うん。の声。

寂しさ。に負けて、僕の我が儘で、あいに無理をさせてしまってた。

それでも、いつも、手を握ってくれた、あいの温もりが、僕の不安を消してくれてるんだ。