「これ、あげる。」

温かくなりだした頃、君の誕生日が待っていた。

小さな車の中、助手席に座っている彼女へ、後ろから小さな袋を取りだしてから、それを膝へ乗せた。

骨董品で売っていたのに、当時少し流行った、蛍光ランプ。

「おめでとう。」

そんな、柄にも無い言葉も付け加え。

「開けていい?」

可愛い笑みで、そんなことを聞くあいに、いいよ。なんて言いながら、頭を撫でた。

「あー!!」

そう言って、プレゼントを見た後に、僕を見たあいの目を、照れて見つめられなかった。

「一個は、俺のね。」

お揃いの物が欲しい。なんて、女々しいことが言えない僕の、小さな抵抗だったから。

「あいは、どっちの色?」

「俺が、青いの!!」

なんて言いながら、あいにキスをした。

「二十代、最初のキスは、俺の物だね。」

「ずっと、ゆうくんの物だよ。」

その言葉が愛しくて、いつもより長くキスをしていた。

「二つも年上じゃん?」

いいでしょ?と問うあいの声に、

「貴方が生まれてきてくれて、本当に良かった。」

気まぐれに出てくる、僕の本音と恥ずかしさを隠すように、好きだよ。の言葉と一緒に、あいを抱き締めた。

「俺が生まれて、少し経った時には、あいは、もう歩いてたんだね。」

そんな、くだらないことを言いながら、

「でも、マジ、安物でゴメンね!!」

と、手を合わせ、謝り続けてた。

「ゆうくんに会えただけで、嬉しいから。物じゃないよ?」

そんな、変わらない小さな優しさが、僕の中で、今では大きな愛に変わってた。

「ありがとう。」
「ありがと。」

真似すんなよ。と言いながらも、

「本当、お前に出会えて、良かった。」

こんな、些細(ささい)な僕のメッセージが、あいに届いているのかな?と、また、不安に包まれたけれど、その笑顔に、いつも、癒されているから。

「あいもだよ?」

僕の我が儘で、君を傷付けたり、涙させたり、怒らせたりするけれど、分かっててほしい。

「愛してる。」

この気持ち。

「それと、いつも、ありがと。」

この想い。

その、たった、二つだけでも、感じてほしいんだ。

「よーし。帰るか。」

あいの家の前に着き、テールランプを、五回点滅させることは難しかったけれど、また、おやすみのキスをして、おめでと。と言って、手を振り、車を走らせた。

『ランプ、点いたよ~!!』

その時から僕は、青いランプを見つめると、あいと、繋がっている。と、錯覚でも、嬉しかったんだ。