どんなに頑張ったって、久喜の考えていることは半分も分からない。半分なんて言い過ぎてるくらいだ。少しも分からない。
「…そっか」
「何その残念オーラ。こっちはかなりスッキリしてんだけど」
「天才って変人が多いって知ってる?」
「自分以上の天才見たことないから、知らない」
「その解答なんかムカつくんですけど」
そう言うと笑われた。何時の間にか手を繋いで歩いているのは気にしない。
手を引っ張られて、久喜が笑う。
それが今の私の幸せだから、これ以上はないと思う。
五月の強い風が前髪をふわりと巻き上げる。もうすぐ梅雨だ。じめじめとした季節がくる。
紫陽花が咲く季節がくる。