肩を掴まれた時にはもう、苛立っていたと思う。周りには聞こえないくらいの声で、センパイが言った。
「他人の女に手ぇ出してんじゃねえよ」
「…は?」
その後ろに見えた女は、この前近付いてきた奴だった。仕切りに彼氏になって、とせがまれたけれど、彼氏居たのか。
ま、どうでも良い。
「それが?」
「脳味噌腐ってんのか、お前」
「少なくともセンパイより二年は新しいっスよ」
挑発する言葉に軽く乗せられる馬鹿男。
「……んなこと言って、タダで済むと思ってんのか?」
グッと力が入る腕。俺より少し低い身長に身体が寄った。