「やだ、何かしら。焦げたような臭いがするわ。」
同じように顔をしかめたレイが、キッチンの扉を開けた。
その途端、むあっと嫌な臭いが強まる。
「あ、レイ、ギルクに…アレン!目を覚ましたのねッ!!」
イルがエプロン姿でおたまを右手に持ち、満面の笑みを浮かべた。
それだけなら天使のように可愛いのだが、横のドロドロした茶色い液体のせいでアレンには悪魔のように見えてしまった。
「…ん、イル、それ何」
アレンはイルの横の液体を指差した。
強烈な臭いを放つそれは、真っ白なご飯の上にかけられていく。
「カレーよ♪」
さっき、塩とか小麦粉とか言ってなかったっけ。
カレーの調理に塩や小麦粉を使うのかを一生懸命考えるアレンだった。
「…イル、何を入れたの?」
レイが両手で鼻と口を覆いながらくぐもった声で恐る恐る質問した。
「塩とケチャップと…醤油と…ソースも入れたかなッ。まぁ色々♪ちゃんとカレーの色でしょ??」
自慢気に言うイルの言葉を聞いて、三人は後退りした。
「ね、ギルクとアレン、食べてみてよッ♪絶対、おいしいんだからぁ☆」
そう言った悪魔は、カレーをそれぞれの手に一皿ずつのせてにじり寄って来る。
「ひっ」
ギルクが悲鳴をあげた。
「…俺、起きたばっかで食欲ないから、いい」
心と裏腹な言葉を言ったアレンは逃げるようにキッチンの扉に近づく。
「一口だけ、ほら、あ~ん♪」
「あ~ん♪」とか言いながら無理やりイルは二人にスプーンを押し込んできた。
その途端、アレンが口を抑えて飛び出していく。
ギルクはぶーッと吹き出すと、顔面蒼白になりながら肩で息をした。