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涼しくて爽やかな風が部屋を通る。


その風に髪を揺らし、アレンは目を覚ました。

静かに身を起こすと、さっきまでの記憶が一気に押し寄せてきた。




「……………。」





無言で布団が掛かったままの立てた膝に顔を埋めた。


ふと、目が微かに痛いのに気が付いた。


指先で触れてみると、軽く腫れていた。




「……アレン!起きたのね!」

レイが窓を覗いていた身体を振り向かせた瞬間、寄ってくる。

窓を開いて風を入れたのはレイらしい。


それをぼんやりと意識しながらも、アレンはまだ目元に指先を当てていた。


「大丈夫?急に倒れ込むから心配したのよ。」


レイに話し掛けられても、アレンは返事をしなかった。


「…目、赤くなってるわよ」

アレンが目元を気にしているのに気付いたレイはそう言うと横の椅子に座った。


しばらくの沈黙の後。









「…俺、泣いた、よな…?」









微かな声でアレンが聞いた。


レイは首を傾げながらも、

「…えぇ」

と答える。





「…ビックリした」

「え?」

「涙が出るなんて思わなかった…。あれから、一回も泣かなかったから…。」


そう言ったアレンは横のレイを、前髪をかき揚げながら見た。



その仕草にレイは少しどきりとする。





「…アレン?」



ジッと見つめられていたレイは、耐えられなくなって真っ赤になりながら聞いた。