「アレン、自分の怪我も治して。ギルクの後の怪我なら、力も戻ってきたし私がやるから」
自分の横にしゃがんだレイに言われたアレンは顔を上げた。
すぐに俯く。
「…でも」
俺が、怪我させたのに。
「アレン、気にすんなよ」
ギルクの一言でアレンの胸の中に熱いものが広がった。
(…?こんな気持ち、はじめてだ。)
その気持ちを理解できなかったアレンは、微かに首をかしげた。
「…はい、ギルク、完璧よ」
ギルクの怪我を治したレイはにっこり微笑んだ。
「おぅ、ありがとな!」
怪我が治ったギルクは直ぐ様イルの横につく。
「…アレン?怪我、治さないの?」
レイがギルクの怪我を治すのをずっと見ていたアレンは、まだ治療をしていなかった。
黙ったまま座り込んでいる。
俯いたその顔を見ようとレイは立っていたがしゃがんだ。
「アレン」
レイが返事をしないアレンを揺すった時。
アレンの身体が傾いた。
「えっ?」
アレンはそのまま驚くレイにもたれる形で倒れ込んだ。
「へ?アレン?」
ギルクがベッドの向こう側から這ってくる。
「…寝てるわ」
アレンは静かに寝息を立てていた。
「んだよぉ焦るなぁ」
ギルクははー、と安堵の息を漏らすと笑った。
だがレイは笑わなかった。
アレンの顔色が微かに青いのを見て、イルの寝ているベッドの横のもう片方に寝かす。
そのまま布団を被せた。