「………もうちょっと………」



「え?」



彼の制服のすそを少しつかんだ。



「………もうちょっとだけ………
一緒にいてほしい………………。」



「…………………………………………。」




「……………あ!ご、ごめん。
意味分かんないよね!ごめん、忘れて!」



「……………。」



「じゃ、じゃあ、教室にもどっ…きゃっ!」



…………………なにがどうなってこうなったかは
わからない。



頭の中でグルグル考えてみるけど
なにを考えてるのかも分からなくなる。



次第に頭が真っ白になった。



でも、今わかる事実は私が彼の腕の中に
包まれていること。


彼の胸にちょうど私の耳が重なる。


風の音も、



風で揺れる草花の音も、



私の腕の中にいる猫の鳴き声もみんな、



彼の心臓の音でかきけされてゆく。