「知ってる?」
ココは一応問う。
最近会得した人の表情を見るというスキルによって、分かっていないことは明白だったが。
ふるふると首を横に振ったなつきさんは、そのまま首を傾げて、ココを見る。
「貴女は、だあれ?私の……何?」
純粋な疑問を浮かべるその瞳に、ココはまた心を傷められる。
あの時ーーー初めてなつきさんを見たあの時、ちゃんとあたしがなつきさんを連れ戻していたら。
見つかるまでずっと、不可能であったとしてもずっと、なつきさんを捜すことが出来ていたら。
なつきさんは記憶をここまで失わなかったのに。