興奮して大声で話すユウの話をまとめると。
ペンダントをもらい、大天使候補生になるまでが第一次大天使候補生選抜。
そして、第二次大天使候補生選抜というのは。
ひとまず大天使候補生になった人達は己の能力を一定期間内に課題をして、開花させる。
それが一定の基準を満たしていれば第二次大天使候補生選抜は合格。
満たしていなければ不合格となり、そこでサポートの天使達とはお別れ。
大天使候補生だったことは忘れ、今まで通りの生活を歩むことになるのだそう。
「へぇ〜〜」
説明を聞いて理解すると、ココはじわじわと嬉しさが込み上げて来た。
大天使にまた一歩近付いたんだ……!!
ほんの数十秒で落ち着いたユウは突然、ココに声をかける。
「あっ、それで。
ここからは業務連絡だが」
「ん。何?」
「これからの大天使候補生選抜試験は天界で行うんだ。
だからーーー今すぐに用意しろ。行くぞ」
「えっーーちょっ、え?
用意って何を?大体、天界って……学校は?」
「学校はまぁ、どうにかなるから。
用意はーー心の準備だけっ!!
行くぞっ!!」
強引に手を引かれたココは、ユウの後ろを必死でついて行く。
「ーーっはぁ…はぁ、ユっ、ユウ……ちょっと待っ……」
ユウがあまりにも急な角度で上を目指すため、ココは空気抵抗やら何やらで、ほとんど息が出来ない。
ココのやっとの喘ぎで、ココの息が限界まで上がっていることに気付いたユウは、慌てて速度を落とした。
「ごめんごめん。何も考えて無かった」
「もぉっ!ユウ達みたいにこんな高いところ翔ぶの慣れて無いんだから。
容赦してよ」
「ごめんってばーーーごめんな?な?
ーーーっておい、ココ、どうした!?」
ココの目線が、半笑いでユウがへこへこ頭を下げている後ろを必死に、見る。
そして、耐えきれなくなったように、パッとユウを避けて、ユウの後ろの方へ翔び始めた。
「っおい!!待て、ココっ!!」
あの人だー!
あの人ーーーあたしが、ゆういちゃんが、ずっと、捜して来た人!
なつきさんっ!!
「っおい!!待て、ココっ!!」
ユウの声が後ろの方から聞こえる。
さすがにユウの背後の様子は分からないから、ココの突然の行動に面食らったようだ。
その証拠に、いつもならすぐに追い付かれてしまうのに、今日ははるか遠くからユウの声が飛んでくる。
「ココ、戻って来い!!今から天界で、第三次大天使候補生選抜の課題の発表式があるんだから!!」
ユウは必死でココを追いかけながら叫ぶ。
が、ココはそんなことどうでも良い。と言った雰囲気で、一瞬止まることもせず、なつきさんを追い続ける。
「ユウ、もう貴方が時間切れよ」
鋭く制止の声を上げたユキを、ユウは悲しそうに振り返る。
「で、でも、あいつが…」
「あの子のことは貴方の口利きでどうにかしといて。
あんなに望みが垂れ流しの必死なココ、初めて見たし、止められそうにない。止めたくも無いしね」
「どうにかするのはするが…
こっちは大丈夫なのか?」
心配そうにココを指差すユウに、ユキは誇らしげに笑みを浮かべた。
「大丈夫に決まってるでしょう?最初の頃となんか比べものにならないぐらい、成長したのよ?力も、心も。
今のココがあんなに必死になるんだもの、大丈夫に決まってるわ」
「じ…じゃあ……俺は行くが……」
「ん、行ってらっしゃい。
こっちは任せてくれて良いから」
ユキは少々強引にユウを送り出した後、ココを全力で追いかける。
元から身体の大きさが小さいこともあり、ユキは翔ぶのがあまり速くない。
それにココは今、今まで見たことも無いほど速く、真剣に翔んでいるため、とてもユキに追い付けるものではなかった。
ようやく追い付いたのは、ココとなつきさんが、何処かの高いビルの屋上に立って、喋っている時だった。