「お前、まさかそれ取りに戻ったんじゃないだろうな。」


「えっ…と、はは…。」


「バカかお前はっ!!
バックなんか取りに戻ってなに考えてんだよっ!!」


さっきまで優しかった海斗が突然怒り出した。


「…だって…。
この教科書と参考書は陸さんと海斗があたしの為に色々書き込んでくれたやつだから、どうしても置いてこれなかったんだもん…。」


あたしは怒っている海斗の顔がまともに見れず、下を向いたまま話した。


「ハァー、
そんなの俺や兄貴だって何回でも書いてやれるのに。そんなことが理由で…。」


「…あたしにはそのくらい大事な物だったんだもん。」


頭で考えるより先に体が動いていたこともあり、とにかく必死で守りたかった。そう思ったらふと涙が流れた。


「怒鳴ってごめん。
もう無茶すんなよ…。」


海斗はそう言うと、優しくあたしの頭を撫でた。


その仕草に余計涙が溢れた。