…陸さん…。


視界と意識がなくなりかけるとやっぱり思い出すのは陸さんの事だった。


「華奈ちゃんっ!!
しっかりしてっ、もう大丈夫だからね!!」


聞き覚えのある声…。


誰か助けに来てくれた…、
マスクから覗き込む目を見た瞬間、すぐに誰だかわかった。


陸さんだっ!!
来てくれた…。


陸さんはすぐに酸素マスクを付けてくれ、あたしの体を軽々と持ち上げた。


「すぐに出るからね。」


そう言った陸さんはあたしを抱えたまま迷わず走り出し、非常階段から外に出た。


外に出るとはしご車が待っていてすぐに乗り移り建物から離れられた。


陸さんは手袋と被っていたマスクを取ると、あたしの手をギュッと握りしめてくれた。


「良かったぁ、無事で…。こんなに焦ったの久しぶりっ!」


陸さんの手からは激しい鼓動が伝わってきた。


あたしは陸さんの腕の中で、張り詰めた緊張から解放されたからか、意識が途切れた。