朝。
始めに感じたのは、寝返りがうてない、ということ。
ぼんやりとする頭で首だけ動かすと、すやすやと眠る保坂くんの顔が飛び込んできた。
結局昨夜、星を見た後二人で部屋に戻ってすぐに眠ってしまったようだった。
まるで何かから守るみたいにがっちりとホールドされていて、私は固まってしまった筋肉を伸ばそうと彼の腕の中でもぞもぞと動いた。
小さなうめき声とともに、保坂くんがゆっくりと目を開ける。
長いまつげが揺れて、私はどきっとして顔を伏せた。
「おはよ」
満足そうに保坂くんが微笑む。
私はどぎまぎしつつ頷くと、またもぞもぞと動いた。
「ああ、ごめんね。寝にくかった?」
珍しく寝起きがいい保坂くんに苦笑いしつつ、私は起き上がった。
洋服のまま眠っていたから、すっかりワンピースはしわくちゃになっていた。
帰ったらクリーニングに出そう。そう思いつつ、私は首を横に振った。
「あ、今日はお仕事よかったの?」
「だって、今日は親父達が会いに来るしさー。俺だってのんびりしたいもん」
子供のように笑う。
私も微笑むと、時計を見た。
「あ……リエたちと朝一緒にする約束してたんだ」
「ああ、昨日の子達?じゃあ俺も一緒に行っていい?」
「いいけど、話しに入ってこれるの?」
「あ、バカにした?」
笑いながら準備を始める。
なんだかこういう風景も、とても久々だった。
準備を終えると、もうリエ達との待ち合わせの時間がきていた。
昨夜と同じレストランだが、保坂くんが言うには朝はバイキングをやっているらしい。
私たちはレストランの前でリエ達を待ちながら、少しの間おしゃべりをした。
暫くしてリエ達がやってきて、保坂くんが居る事にひとしきり驚いて、やっと朝食を食べるためにレストラン内に移動した。
「おいしいー」
幸せそうに笑う三人を見ながら、保坂くんも普段こんなに近くでお客さんの反応は見れないから新鮮だーと言いながら朝ごはんを楽しんでいた。
何度か保坂くんの同僚がやってきて茶化されたりもしたけれど、平和で温かくて幸せな朝食の時間だった。
「リエ達は今日帰っちゃうの?」
「そうですよー」
「そっか、また沙由とご飯行くときとか誘ってね」
私が言うと、リエは力強く頷いていた。