「そうかなー。でも、びっくりしたよ、一人でくるっていってたのに三人増えてるし」

「偶然会ったの。すごいよね」

会話をしつつ、二人でベッドに腰掛ける。
特に何か予定があったわけではないんだけど、私たちは窓の外を眺めながらそうして語り合う。

「あ、そーだ」

保坂くんが思い出したように立ち上がり、窓辺から下を指差した。
その先にはライトアップされた白塗りのドームが立っていて、ドームの天井はガラス張りになっているようだった。

「あそこいってみようよ」

「あれ、何?」

「内緒ー」

楽しそうに言う保坂くんは可愛いなと思いながら、私はバッグと部屋の鍵を持って保坂くんの後を追う。
消灯時間が近いからか、人影もまばらな廊下、ロビーを通り過ぎ、ドームがあるであろう裏庭に出た。

もう、秋が近い。

少し肌寒く感じる裏庭は、薄くライトアップされて幻想的だった。
保坂くんの後を着いて歩きながら、ゆっくりと辺りを見回す。
綺麗に整えられた庭は、昼間見ておけばよかったと思った。
花はあまり詳しくないけれど、残り少ない夏を精一杯生きる様に夜空に咲いていた。

「ここだよ」

保坂くんの声に、ドームの入り口に辿り着いた事を知った。
中に入ると、ドームの中にはいくつかのベンチと植木鉢に植えられた花々、観葉植物、そして小鳥の小屋が置かれていた。
小鳥たちはもう夜だったからか、眠っているようだった。

「ここから上見てみてよ」

伴われたベンチに腰掛け、保坂くんが微笑む。
私が同じ様にベンチに腰掛けて上を見上げると、そこは満天の星が広がっていた。

まるで落ちてきてしまうんじゃないかと思える程にキラキラと輝く星々に、私は一種眩暈のようなものを感じる。
それは、都会では見ることの出来ない景色だ。

そういえば、夜空を見上げるなんてもう久しくなかった気がした。
これが、保坂くんがいつも見ている景色。

私は目頭が熱くなるのを感じて、慌てて目元をぐいっと拭った。

「綺麗でしょ」

保坂くんの優しい声が振ってくる。
私の返事なんて待たず、彼は続ける。

「……俺にとって、薫ちゃんはこの星と一緒。キラキラしてて、儚くて、都会の汚い空気の中だとすぐに霞んでしまうような、そんな危うさがあって」

彼はそこで言葉を切ると、私のことをぎゅっと抱きしめる。

「だから、薫ちゃんが消えちゃうんじゃないかって、離れてる間ずっと不安だった。それが今回、最悪の形で思い知らされた。俺に出来ることってなんだろうって、ずっと思ってたよ」

「保坂くん……」