あれから一ヶ月がたった。
被害届けは出したものの、結局示談にすることに落ち着いた。
勇吾さんに対しては、私たちに対する接近禁止。もし私の側に現れたら、今度こそ示談では済まさない。
慰謝料の類は、貰わなかった。
私の会社には連絡をして、このまま退職させてもらうことにした。
事情を話すことに抵抗はあったものの、保坂くんや誠二さん、それに両親の勧めでそうすることにした。
上司は大層心配してくれて、沙由は自分の事の様に泣いたり怒ったりしてくれた。
私の不注意もあったことなのにね。
たまに、どうしようもなく自分の事が許せない時がある。
私がもっと強い態度に出られていれば……そんなことを思うこともあるけど、そういう時は保坂くんの言葉を思い出す事にしている。
私が、強くならないと。
あの夜もてなかった勇気が、私の中に溢れる気がする。
沙由から聞いた話だと、勇吾さんのバンドは解散したそうだ。
勇吾さんはそのまま、この街から実家のある田舎へご両親に連れられ帰っていったらしい。
私は少し安心した。
あの夜以来、直接勇吾さんに会うことはなかったから。
「薫、どうしたの?大丈夫?」
声を掛けられて、はっと我に返る。
考え事をしていたから、何の話をしていたのかと一瞬まばたきをする。
「あ、雪菜……ごめんね、ちょっと」
「もう、しっかりしなよー。疲れたの?」
あの日以来、私の側には常に誰かいた。
いてくれている、という方が正しいのかもしれない。
両親は私を心配して、実家に私を戻した。
雪菜や沙由はこうして、休みの日は買い物だランチだと連れ出してくれる。
誠二さんも、一人で出かけるなら寄りなさいとカフェに呼んでくれた。
保坂くんだけは遠方なこともあって、もう職場に戻ってしまっていたけど、前よりもメールや電話の回数が増えていた。
みんなに心配を掛けている申し訳なさもあったけど、私はそれに甘えてしまうことにした。
「大丈夫だよ、雪菜」
「ならいいけど。そうだ、薫。お互いもうすぐ人妻になるんだしさ、記念にプリクラでもとらない?」
「え?いいけど、なんかこの歳になってプリクラって恥ずかしいね……」
高校生や大学生の頃はよくとりにいったっけ、なんて思い出す。
社会人になってからは、殆どそういうこともなく。
保坂くんとも、あんまりプリクラはとったことがない。
「でもまぁ、せっかくだし」
私たちはゲームセンターにあるプリクラ機の前へ移動した。
休日のゲームセンターは、女子高生や女子大生がたくさん来ていた。
「どれがいいとか、わからないね」
「どれでもいいよー」
二人並んで操作画面の前に並ぶと、大学生に戻った気分だった。
久しぶりに、心が明るくなった気がして私たちははしゃぎながら数枚のプリクラをとった。