それでも私たちが別れずにやってこれたのは、反対されたのを押し切ったという意地と、翔太のお陰だったのだろう。

翔太が笑うようになると、互いの間にあったぎこちなさが少しずつ消えていった。
初めてハイハイをした時は、二人で抱き合って喜んで。
カメラを構えては変な顔をして笑わせようとしたり、
机の角には、佑くんの古いTシャツをつかってクッションを作ってくっつけたりした。

お金は無かったけど、今あるものでできることを二人でたくさん考えた。

佑くんがいて、翔太がいる。
それが一番幸せだと実感できるようになった頃、私は仕事に戻らなきゃいけなくなった。

「ごめんね、翔太。まだこんなに小さいのにね」

保育園に預けるとき、ぽつりと言ったその言葉に保育士さんが答えてくれた。

「笑顔で迎えに来てあげてください。大丈夫、翔太君はちゃんと分かってくれますよ。お母さんやお父さんが、自分の為に働いてくれてるんだってこと。お母さんが、元気で送ったり迎えに来てくれたら、子供はそれだけで安心しますから」

「はい。……翔太、お母さんも頑張ってくるね」

「あー」

まだ、言葉もほとんどしゃべれない頃だった。

仕事が再開すると、家族全員がそろえる時間は慌ただしい朝の時間しかなくなってしまった。
佑くんが帰ってくるのは相変わらず夜中だったし、平日私が仕事に出るようになるともう休みが合わない。

寂しいのと、休みの日も家にこもることしか出来ない日々に、少しずつ疲れがたまっていったのを覚えている。