彼は現実が見えてなかったのかも知れないけど、でもその優しさがとても嬉しくて大好きで。
私も産んで二人で育てる決心をした。

私たちの結婚は、双方の親から反対された。
先に妊娠してしまうような軽率さをののしられ、いつ行ってもお説教される。五歳もの年の差も、彼の両親から見れば気に入らなかったのだろう。

何度も何度も許しを請いに行き、次第に大きくなるお腹に不安を抱えながら、ようやく許しがもらえたのは臨月間近だった。

出産直前に籍を入れ、佑くんが指輪をくれたのは翔太が生まれた後だった。
産後のむくみで指輪が入らなくて、思わず泣いてしまったことを覚えている。

「結局、初めてつけたのが、1ヶ月検診に行くときだったんだっけ」

今となっては笑ってしまう話だ。それ以来、私の指からこの指輪が外れたことはない。




 やってきた電車に乗り込み、窓の外の景色を眺める。
こんな風に電車の中で、流れていく景色を見るなんてのも、実は久しぶりだ。
翔太と乗っていると、周りを考えずに大声を出すので叱ってばっかりになるんだもの。

流れる車内アナウンスに耳を傾けながら、再び昔の事を思い出す。