「翔太、寝た?」

夜の九時を過ぎたころ、隣の部屋でテレビを見ていた佑くんが入ってくる。

「うん。もうぐっすり。今日、ぐずったりしなかった?」

「最初ちょっとな。麻由が行ってすぐは泣いた。でも、そのうち楽しく遊び始めたぞ」

「そうかあ、そうだよね」

保育園も二年目だもん。
翔太も私と離れるのもすっかり慣れてるんだよね。

「……ごめんな。本当は、もっと、ちゃんと喜ばせてやろうと思ってたのに」

申し訳なさそうな顔をした佑くんの手を取って、私の手を重ねる。

「とっても、とっても嬉しかったよ。ありがとう、佑くん」

照れたような顔の佑くんが、私の前に正座をした。
つられるように私も正座をする。
なんか大事なことを言ってくれそう。

「麻由、いつも頑張ってくれてありがとう。これからも、翔太と俺のかわいいお母さんでいてほしい」

「……佑くん」

『それじゃあ、佑くんのお母さんにもなっちゃうじゃないの』と突っ込みたくなったけど、……やっぱり、嬉し涙で言えなかった。


「麻由」

佑くんの腕が、私を包む。
何度も何度もこの腕に抱きしめられたけど、今が一番幸せかもしれない。


「そう言えば、あったよ、欲しいもの」

「なんだ? 遠慮なく言ってみろよ」

「あのね……」


耳元にそっとささやくと、顔を赤くした佑くんが私の目を見て笑う。

「それなら、いつでも」

強く、抱き締められた。初めて触れた時のような温かい気持ちで。

「俺も欲しいよ。……翔太の兄弟」


……Sweet Sweet Mother's Day




【fin.】