「ああ、そうだ。二人でこっそり病室で食べたんだよな」
「うん。とってもおいしかったから」
翔太の顔じゅうについたクリームを拭きながら、あの時の気分を思い返す。
あなたが生まれてきてくれて、すごくすごく嬉しかったの。
あなたがいてくれたから、私と佑くんは親になれたの。
ありがとう、翔太。
「翔太にプレゼントがあるんだ。ほら、じゃーん」
「うわー。ギギラ!」
怪獣のフィギュアを、早速掴んで動かし始める翔太。
「なんだ麻由、全然自分のもの買ってこなかったんじゃないか」
佑くんは私の持ち帰ったマイバックの中身を見て言う。
「お昼、お母さん呼んで食べたし。ほらケーキも」
「食べ物ばっかだな。ホントになかったのか? 欲しいもん」
「うん。もう十分」
翔太がギギラで遊んでいる間、佑くんと二人でお片付けをした。
こうして並んでいるだけで楽しいと思えることを、今日は改めて実感した。