まだ早いけど、……もう帰ろう。
でも、何か自分のものも買っていかないと佑くんが気にするから。
私はデパ地下の洋菓子店を見回って、思い出のケーキを捜した。
佑くんと翔太と私の分、三つを買って店をでる。
急いで電車に飛び乗って、家路を急いだ。
帰ったらどんな顔をするだろう。
驚くかな。
翔太はきっと、喜ぶよね。
一人で街を歩いていても、思い出すのは二人の事ばかり。
自由は楽しいけど、一人は寂しくて
やっぱり一緒の方がいい。
駅から飛び出し、ヒールの音を慣らしながら歩く。
あの角を曲がるとアパートが見える。
狭いけど、大事な我が家。
佑くんと私で作り上げた、大切な家。
「ただいま!」
大きな声でドアを開けた。
「麻由?」
驚いた佑くんの声とともに、粉を全身にかぶった翔太が私のところに駆けてきた。
「ママー」
「し、翔太」
翔太が私に抱きついて、ワンピースも粉だらけになる。
ちょっと待ってよ。
掃除もしてくれるんじゃなかったの?
一体、何をしてこんなことになっているの?