「最初は五歳も年下なんてどうなる事かと思ったけど、佑汰くんはちゃんと麻由の事大事にしてくれているのね」
そう言われると恥ずかしい。
今思い返せば、自分たちだって舞い上がっていたと思う。
好きな人と触れ合ってお腹の中に新しい命ができて、これを守る以外に正しいことなんかないと思ってた。
確かにそれはそうなんだけど、互いの両親が言っていたこともまた真実だったのだと今では分かる。
人一人を育てるということが、どれほど大変で重みのあることなのか、あの時の自分たちにはさっぱり分かっていなかったんだもの。
「お母さん」
「なに?」
「私、今幸せだよ」
母の表情が一瞬驚きに変化する。
「なに急に。見てれば分かるわよ」
「私の好きなようにさせてくれてありがとう」
「麻由」
今なら分かる。
わざわざ困難な結婚に向かっていく娘をただ見ているのは歯がゆかったろう。
ノイローゼのように、夫にあたる私を見ているのは辛かったろう。
それでも、両親は見守ってくれてた。
翔太の為に選んだ結婚なら、頑張ってみなさいと言ってくれた。
それが、今の私を作ってくれたんだ。