「あのー、柏木さん?」
「はい?」
名前を呼ばれて振り返ると、見ず知らずの男子がいた。
「ちょっといいかな?」
「え?あ、はい」
そう言って連れて来られたのは人気のない静かなところ。
あ、もしかして。
さっき海美から教えてもらったばかりのフレーズが頭に浮かぶ。
"男子が女子に告白してその恋が実れば一生続く"
あたし、告白されるのかな。
そう思うとドキドキしてくる。
何回されててもこの感覚は消えない。
「好きです!付き合ってください!」
「ごめんなさい。気持ちは凄い嬉しいんだけど、あなたの気持ちに応えることはできません」
「そっか。だよね、俺のことあんま知らないもんね」
「あ、うん」
申し訳ないと思いながらも正直に言う。
「俺、滝川 暁(Akatuki Takigawa)。柏木さんの隣のクラス。だからさ、友達にならない?」
「友達?」
「そう。あ、俺のこと暁でいいから。よろしく、梨奈ちゃん」
そう言って差し出された手を握る。
「よろしくね、暁くん」
それから有難いことに多くの人々に告白されたけど、あたしの頭は奏汰のことでいっぱいだった。